調剤薬局事務とは、薬局やドラッグストアで接客をおこなったり、処方箋の記録を残したりする事務職です。
調剤薬局は2020年時点で6万か所以上にのぼり、コンビニエンストアの店舗数を上回ります。調剤薬局の増加にともない、調剤薬局事務も年々需要が高まっています。
しかし、調剤薬局事務の業務内容がハードであると感じ、辞めたいと思う方も少なくありません。
本記事では、調剤薬局事務を辞めたくなる原因と解決方法について解説します。辞めたくなったときの考え方や、おすすめの転職先についてもあわせて紹介するため、退職後に後悔しないよう、調剤薬局事務を辞めたいと考えている方はぜひチェックしてみてください。
調剤薬局事務の仕事を辞めたい代表的な原因
ここでは、調剤薬局事務の仕事を辞めたい原因としてよく挙げられる点を解説します。
残業が多い
一般的な事務職と比較して、調剤薬局事務は残業が多い傾向にあります。とくに門前薬局は、患者に処方薬を渡すまで業務が終わらず、残業になる可能性が高くなります。
門前薬局は、病院やクリニックのすぐ隣にある薬局です。基本的に、隣接する医療施設で診察を受けた患者がそのまま来局するため、診察終了時刻がずれ込むほど、調剤薬局の閉店時間も遅くなります。
時間外であっても急患を受け入れ、イレギュラーな対応が求められるケースも少なくありません。退勤後の予定を立てられず、プライベートが削られストレスも感じやすくなります。
調剤薬局は、近隣の医療施設の診察時間にあわせるため、朝早くから夜遅くまで営業しているところもあります。営業時間が長いために、調剤薬局事務も比例して労働時間が長くなることもあります。
一般的な事務職は、仕事や時間に追われにくい職種で、定時に終業しやすい認識がありますが、多くの調剤薬局では例外となります。
人間関係が大変
調剤薬局事務は、医師や看護師、薬剤師、患者など多くの方と関わる必要があり、人間関係でストレスを抱えやすい職種です。
本来は、調剤薬局事務と医師や看護師、薬剤師は協力して業務にあたらなければなりません。しかし、国家資格をもつ医療従事者と比べて、調剤薬局事務の立場は低くなりがちです。医療従事者であるプライドから、高圧的に接してくる方も多くなります。
調剤薬局事務同士であっても、忙しさのあまり精神的余裕がなくなってストレスが溜まり、人間関係が悪化するケースも少なくありません。
業務内容と給与水準が合わない
調剤薬局事務の仕事内容と、給与が見合わないと感じ、辞めたいと思う方も多いでしょう。
調剤薬局事務の平均年収は約300万円です。日本の平均年収は約380万円であるため、比較すると低い傾向にあります。
調剤薬局事務は事務作業以外にも、受付業務や会計も並行しておこなう仕事です。保険の専門的な知識を身につけて、医薬品の検品や入庫作業をしたり、薬剤師のサポートをしたりと、業務内容は多岐にわたります。
求められる業務が多いのに対して給料が低く「こんなに頑張っているのに給料が少ない」と、慢性的に不満を抱えている方も少なくありません。
クレーム対応が大変
調剤薬局事務はクレーム対応が多い傾向にあり、辞めたいと思う気持ちが強くなる方も多いでしょう。
薬局で対応する患者のなかには、医療施設で長時間待たされた方もいます。クリニックで長時間待たされ、積もり積もった不満が薬局で爆発するケースも少なくありません。怒りの矛先は薬剤師ではなく、受付や会計をおこなう調剤薬局事務に向く場合が大半です。
自身に非はないのに、患者と接する機会が多いために理不尽なクレームを受けなければならない現実に疲弊して、退職を検討する方もいます。
調剤薬局事務を辞めたくなる原因を乗り越える方法
さまざまな要因から、調剤薬局事務を辞めたいと思う方も多いですが、乗り越える方法について解説します。
残業を抑える
調剤薬局事務を辞めたい原因が残業の多さにある場合は、全体的な仕事量を把握しましょう。
漠然と仕事に取り掛かるのではなく、業務内容をすべて書き出してみてください。リスト化して時間配分しておくと、業務時間内に仕事が終わりやすくなります。
経験を積むのも、残業を抑える秘訣です。事務作業は同じ業務の繰り返しが多いため、慣れると仕事の速度が上がります。ただしミスがあると原因を探す手間や、やり直す必要が生じてしまい余計に時間がかかるため、自身がおこなった仕事を逐一確認してミスを防ぐよう努めましょう。
人間関係を改善する
人間関係がつらく、調剤薬局事務を辞めたいときは、職場のスタッフとコミュニケーションをしっかり取るよう意識してみましょう。
こまめに報連相や感謝を伝えるよう心がけると、相手も気をつけてくれるようになり、関係性が改善するケースも多くあります。
相手の対応に変化が見られない場合は、距離を置くのも大切です。苦手な同僚や上司と出勤時間が被らないようにシフトを融通してもらったり、異動できないか相談してみたりするのも手段の一つです。
人間関係の悩みはどの職場でも生じやすいため、転職しても同じ悩みを繰り返す可能性があります。相手の態度を改善しようと張り切るよりも、自身が割り切って受け流す対応も必要です。
給与に悩んでいるときの乗り越え方
調剤薬局事務の給与の低さに悩んでいるなら、昇格や昇給によって給与アップを狙いましょう。
勤務年数が長くなって昇進した方や、役立つ資格を取得した方は、給与が上がる可能性があります。調剤薬局事務の場合は、2年以上従事して試験に合格し、登録販売者資格を得ることで昇給も可能です。
資格を取得したのに今いる職場で給与アップが見込めない場合は、思い切って転職を検討するのも一つの手です。有資格者であることによって、有利に転職できる可能性も見込めます。
クレーム対応の改善
クレームが多く調剤薬局事務を辞めたいときは、クレーム対応を変えてみましょう。クレームをいう方に対して、聞きの姿勢で臨み、丁寧に話を聞く態度を見せると効果的です。
薬局に怒りをぶつける患者のなかには、ただ話を聞いてほしい方も一定数います。患者の話を受け止めることで、態度が軟化して短時間で対応が終了する可能性が高くなります。
可能であれば、近隣のクリニックと連携を取るのもおすすめです。処方箋ができ次第FAXしてもらい、少しでも早く調剤に取り掛かれるようにしておくと、患者の待ち時間を多少短縮できます。
クレームの対応時間が短くなれば、自身の業務に充てる時間を確保でき、残業時間の削減につなげられます。
調剤薬局事務を今すぐに辞めたい場合に考えるべきこと
調剤薬局事務の仕事がつらく、今すぐに辞めたいと思っている方も多くいるでしょう。退職手続きをする前に、考えるべきことについて解説します。
未経験の新人の場合
調剤薬局事務として勤続年数が1年未満の場合は、次の採用に不利に働くケースが多くなります。前職の勤続年数があまりにも短いと、新しい職場でもすぐ辞めてしまうのではないかと企業側に疑われてるためです。
転職するなら、2年以上勤務したうえで登録販売者の資格を取得してからにするとよいでしょう。登録販売者とは、医師又は薬剤師のもとで2年以上の実務経験を積むと試験を受けられる、医療系の国家資格です。
資格を取得できれば、次の職場の選択肢が広がります。医薬品や健康に関する幅広い知識が身につくため、製薬会社や高齢者施設、保育施設などで活躍できるでしょう。登録販売者の有資格者として転職すれば、一般のスタッフより給与が優遇されるケースもあります。
明確な目標がない限りは、調剤薬局事務として2年以上勤務し、資格を取得してから転職するとよいでしょう。
経験年数が2年以上ある方の場合
調剤薬局事務として2年以上の経験がある場合は、今後やりたい仕事や、辞めたあとのキャリアプランを計画してから転職するとよいでしょう。
興味がある仕事や持ち前のスキルで活躍できる仕事を割り出し、活用できる資格を取得しておくと、転職活動がスムーズに進みます。
調剤薬局事務の経験があれば、医療事務や一般事務でも充分活躍できるため、転職先におすすめです。
調剤薬局事務のおもな転職先は?
調剤薬局事務として勤めていた方が、転職先にどのような職種を選んでいるのか気になる方は多いでしょう。転職先に選ばれやすい仕事は、次のとおりです。
- 医療事務
- 一般事務
- 調剤薬局事務のパートや派遣社員
ここでは、調剤薬局事務として勤めていた方が選ぶ、おもな転職先とおすすめの理由について解説します。
医療事務への転職で活躍できる可能性あり
調剤薬局事務から医療事務への転職は、スキルを活かしやすいためおすすめです。調剤薬局事務で培った経験を活かし、即戦力となれます。
多少の違いはあるものの、パソコン操作や報酬請求関係など共通している業務も多くあります。大きな差はありませんが、医療事務の方が給与が高い点もメリットです。
ただし、医療事務は幅広い知識を求められる傾向にあるため注意しましょう。調剤薬局事務はおもに調剤関係の知識に限られますが、医療事務は病院やクリニックに関する専門知識を広範囲に取得する必要があります。
調剤薬局事務と同様に、仕事内容がハードである可能性を理解したうえで、転職を検討しましょう。
一般的な事務としての転職も少なくない
調剤薬局事務から一般事務への転職は、ストレスを軽減できるケースが多くおすすめです。
一般的な事務は接客対応がなかったり、定時で上がれる日が多かったりするため、調剤薬局事務よりも心身の負担が軽い傾向があります。パソコンスキルやお金の授受など、業務上の共通点も多いため、早く順応できます。
ただし、単調な仕事が多いと感じたり、人と接する機会が少なくやりがいを感じられなかったりするケースもあると理解しておきましょう。
ワークライフバランスを重視して働きたい方なら、一般的な事務職への転職がおすすめです。
パートや派遣社員として自分らしく働く
調剤薬局事務の正社員ではなく、パートや派遣社員などの選択肢もあります。フルタイムではなく時短で働けるため、残業時間や人間関係のストレスを軽減できる働き方です。
シフトを変更すれば、苦手な同僚や上司と勤務時間をずらせるため、精神的なメリットが大きいといえます。
ただし、パートや派遣社員になると収入は減る傾向にあるため注意しましょう。大半の場合は月給制ではなく時給制となり、勤務時間が短くなるほど収入も少なくなります。正社員と比較して給与が上がりにくく、将来的に不安を感じる場合も多くなるのかもしれません。
調剤薬局事務を続けながら、収入よりもプライベートを重視したい方や、ほかにもやりたい仕事があって両立したい方には、おすすめの働き方です。
調剤薬局事務から転職する2つの方法
ここでは、調剤薬局事務を勤めていた方が転職する方法について解説します。
ハローワークで相談する
調剤薬局事務から転職する際は、ハローワークを活用できます。ハローワークは全国各所にあるため利用しやすく、転職をサポートするプロに直接相談が可能です。失業手当の申請と同時に、利用してみるとよいでしょう。
ただし、ハローワークは幅広い求人情報を取り扱っているため、労働条件が整備されていない企業も多くなります。給与や休日日数、労働時間、福利厚生など、待遇面を重視する方にとっては、魅力的な求人が見つかる確率が低い可能性があります。
転職、求人サイトに登録する
調剤薬局事務から転職する際は、民間の転職サイトや求人サイトが便利です。転職サイトでは、事前に業界や会社の情報を調査したうえで求人を掲載するため、悪条件の企業は排除される傾向にあります。
給与や休日日数、労働時間、残業時間、賞与などさまざまな条件から求人を絞れるため、自身の希望にあう求人を見つけやすい点が特徴です。自身に合う求人を紹介するおすすめ機能や、診断テストを搭載しているサイトもあるため利用してみましょう。
希望する職種や業種がある場合は、特定の業界の求人のみ取り扱う特化型転職サイトを活用すれば、より多くの求人情報をチェックできます。
調剤薬局事務からの転職におすすめの転職サービス5選
調剤薬局事務から転職する際に利用できる、おすすめの転職サービスを5つ紹介します。
医療事務求人.com
医療事務求人.comは、株式会社日本教育クリエイトが運営する求人サイトです。医療業界に特化しており、日本全国の求人情報をチェックできます。
登録求人件数は約1万7,000件と、非常に豊富な点もメリットです。こだわり条件を細かく指定でき「40代活躍中」や「残業月10時間以下」など、希望する環境を検索できます。就業前に職場の見学にも行けるため、ミスマッチを防げます。
求人数が多くて選べない場合は、無料の転職サポートに申し込むと各地域の担当者に相談も可能です。
日本医療事務協会と連携している点も、医療事務求人.comの特徴です。有名な大学病院と契約しており信頼性が高く、安心して利用できます。
ジョブメドレー
ジョブメドレーは、株式会社メドレーが運営しており、会員数100万人以上を誇る日本最大級の医療介護求人サイトです。
医療、介護、保育、福祉、美容、ヘルスケアを含む、約41万件の求人情報を掲載しています。全国各地の情報を掲載しており、都心部で働きたい方や地方に定着したい方にもおすすめです。
病院や歯科診療所、代替医療、ドラッグストアなど、就業先種別で細かく検索できるため「前職は門前薬局で勤務していたけれど、ドラッグストアに転職したい」のような希望がある場合に活用できます。
利用者のライフプランに合う求人が見つかりやすい点も特徴です。時短勤務や子育て支援を取り入れている事業所、キャリアアップを支援する求人も掲載しています。
登録時は、LINE連携をしておくとよいでしょう。LINEで通知を受け取りができるほかに、LINEからの問い合わせも可能です。
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まとめ
調剤薬局事務を辞めたいと悩む方が、仕事をつらいと感じる原因について解説しました。多くの方が、給与や業務内容に不満を抱いていたり、忙しさから人間関係が悪化しストレスを感じていたりするケースが多いようです。
事務職は負担が少なく楽だという認識を持たれやすいですが、調剤薬局事務は業務内容が幅広く、残業が多い傾向があります。とはいえ、入社後すぐに辞めてしまうと、応募先の企業の心証を悪くしてしまい、次の職場がなかなか見つからない可能性が高くなります。
辞めたいと思ったら、まずは対応策を実践して、職場環境の改善に努めましょう。状況が改善されない場合は、転職サイトや求人サイトを利用して、自身に合う職場を探してみてください。
※本記事の情報は2023年2月時点のものです。
※本記事は公開・修正時点の情報であり、最新のものとは異なる場合があります。キャンペーンを含む最新情報は各サービスの公式サイトよりご確認ください。
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<参考>
医療事務求人.com
ジョブメドレー
求人ボックス