妊娠したら仕事は辞める?続けるべき?辞めるタイミングや支給されるお金や制度について解説!

妊娠が発覚してうれしいと思う反面、仕事はどうしたらよいのか迷う方も多いでしょう。

つわりがつらかったり、職場の方の理解が得られなかったりすると「仕事を辞めたい」と感じてしまいます。

妊娠中のストレスを避けたり、今後の生活を考えたりして、赤ちゃんを大切に思う気持ちから退職を検討する方もいます。赤ちゃんも仕事も大切であり、悩むのは当然です。

本記事では、妊娠によって仕事を辞めるタイミングについて解説します。退職するメリットやデメリットのほかに、受給できるお金についてもあわせて解説するので、妊娠が発覚して仕事を続けるか悩んでいる方はぜひ最後までチェックしてみてください。

妊娠で仕事を辞めることは普通

「妊娠したから仕事を辞めたいと思うのは甘えなのかもしれない」と考える女性は少なくありません。

しかし、妊娠による退職は甘えではないため安心してください。仕事は少なからずストレスを伴いますが、妊娠中はストレスを避けなければならない期間だからです。

ここからは、妊娠で仕事を辞める理由について解説します。

妊娠中のストレスは危険

妊娠中にストレスを感じると、赤ちゃんに悪影響を及ぼすため危険です。ストレスによって、赤ちゃんの発育の遅れや早産に繋がる可能性も少なくありません。

ストレスを感じると血管が収縮し筋肉が緊張した状態になるため、子宮収縮や血流悪化が起こります。

赤ちゃんは母体の子宮に流れている血液から酸素や栄養を得ていますが、慢性的にストレスを抱えていると、酸欠や栄養不足に陥る可能性もあります。

赤ちゃんの神経系の発達に影響を与えるケースもあります。強いストレスを感じると、コルチゾールと呼ばれる副腎皮質ホルモンが母体で多く分泌されます。コルチゾールが赤ちゃんに伝わると、神経機能への障害や低体重の原因に繋がりかねません。

具体的には、生まれてきた赤ちゃんがADHD(注意欠陥障害)になったり、成長過程で情緒不安定やうつ病、生活習慣病を発症しやすくなったりします。

ストレスは母体にとっても大敵です。ストレスにより自律神経が乱れると、頭痛、便秘、動悸、立ちくらみ、めまい、睡眠障害など、さまざまな症状が現れやすくなります。

妊娠中はただでさえ心と体のバランスが乱れ、不安定になりやすい時期のため、ストレスを感じやすくなったと思う方も少なくありません。

母子ともに健やかに過ごすためには、できる限りストレスを避ける必要があると心がけておきましょう。

妊娠で仕事を辞めるタイミング

妊娠によって仕事を辞めるタイミングは、自身の体調にあわせて決めましょう。

つわりがひどく早い段階で退職する方もいれば、体調に不安がなく出産ギリギリまで仕事をする方もいます。

こちらでは、妊娠によって仕事を辞めるタイミングについて解説します。

つわりがつらい場合:妊娠初期〜中期に辞める

つわりがつらいと感じる場合は、妊娠初期や中期の退職を検討しましょう。つわりがひどいと食事をとれなかったり、何度も吐き気に襲われてしまったりと、仕事どころではなくなる場合もあります。

体調不良から休んでしまい、周囲に迷惑をかけていると感じてしまうと、罪悪感からストレスを抱いてしまうこともあります。妊娠中のストレスは赤ちゃんにも悪影響を及ぼすため、思い切って早い段階で退職を決断するとよいでしょう。

体調がよい場合:妊娠後期に辞める

つわりがひどくならず体調がよい方は、妊娠後期まで仕事を続けてももちろん問題ありません。妊娠後期に辞めると、周囲に仕事を引き継ぐ時間を十分に取れます。引き継ぐ方に業務内容をしっかり伝えられるため、安心して退職できるでしょう。

時間がない状態で引き継ぎをすると、内容がきちんと伝わらない場合があり、残された職場の方が大変な思いをする場合もあります。妊娠後期の退職を選択すれば、辞めるまで数か月の期間を確保できるため、引き継ぎに関するミスを防ぎやすくなります。

ただし、大きなおなかで通勤や業務をしなければならないため、負担が大きいと感じる方も少なくありません。退職時期が出産間近になると、出産準備期間を確保しにくくなる可能性もあります。

仕事の種類によっては早めに辞める

業務内容によっては、妊娠初期の早い段階で退職するのも一つの選択肢です。現在の仕事内容が、妊娠中の体に負荷がかかるようなものであれば、早めの退職を視野に入れましょう。

たとえば、工場勤務や運搬業などは、立ち仕事や重い荷物を運ぶ必要が発生し、体に負担がかかります。接客業やコールスタッフなどは、クレーム対応で強いストレスを感じてしまうケースもあります。

すぐに仕事を辞められないのであれば、負担が少ない仕事への配置換えを上司に相談してみましょう。仕事内容を変えられない場合は、赤ちゃんの命を守るためにも早めに退職を検討してみてください。

仕事を辞めるタイミングは人それぞれ

仕事を辞めるタイミングは人によって異なります。体調や状況は人それぞれのため、だれかにあわせる必要はありません。

たとえば、職場の先輩ママや友人たちが産休に入るまで出勤していたからといって、同じように頑張らなくてはいけない理由はないのです。体調に問題がなく、まだ仕事を続けたい気持ちがあれば、妊娠後期まで仕事を続けてもよいでしょう。

周囲への配慮は大切ですが、妊娠何か月目までは働かないといけないという取り決めはありません。赤ちゃんと自身の健康を第一に考えた行動を心がけつつ、上司と相談をしたうえで退職時期を決めましょう。

妊娠中に仕事を辞めたいと思う理由

ここでは、妊娠中に仕事を辞めたいと思う理由として、考えられる要因を解説します。

つわりで体調が悪く仕事に集中できない

つわりによって出勤できなかったり、仕事に集中できなかったりすると「仕事を辞めたい」と悩んでしまう場合もあります。とくに妊娠初期は、体調不良によって心身のバランスが乱れてしまうことも多いからです。

一般的に、つわりは妊娠4〜6週から始まります。つわりを経験する方の割合は約80%といわれており「体がだるい」「胃がむかむかして吐いてしまう」「食欲がない」と多くの方が感じています。

体調が悪い状態が続くため、仕事を継続する自信がなくなったり、出社したくないと感じてしまったりするのは当然のことです。体調の変化から精神的に不安定な状態になり、退職を検討する女性は少なくありません。

ストレスで赤ちゃんに影響が出ないか不安

仕事中や通勤中のストレスによって赤ちゃんの成長に影響が出ないか不安を感じる場合もあります。妊娠中のストレスは胎児にも悪影響を及ぼし、早産や流産、発育に関わるリスクが生じるためです。

さらに妊娠中は、精神的に不安定になりやすく、周囲の反応に敏感になりがちです。些細なミスや他人からのひと言に、ひどく落ち込んでしまったり、周囲への罪悪感を感じてしまったりする時期でもあります。

仕事をしていると多方面からストレスにさらされるため、仕事を辞めたいと考えるのは当然のことです。

育休や産休が取れるか不安

出産前後に育休や産休が取れるか不安を感じ、退職を考えるケースもあります。会社によっては体制が整っておらず、休暇を取りにくかったり、休んでいる間にほかの社員にしわ寄せがいったりする職場もあるためです。

会社の規模にかかわらず産休や育休制度がない会社は違法とされています。本来、産休は出産予定日の6週間前から出産後8週間まで、育休は子どもが1歳に達するまで取得可能です。育休は、保育園に入所できない等の理由があれば、申請によって最長2歳まで延長できます。

産休や育休の制度はあるものの、休みを取りにくいと感じるケースもあります。とくに、同じ職場の先輩ママが産休や育休を取れていない場合や、休みを取って悪く言われた経験があると、不安を感じてしまうのも無理はありません。

出産や育児に対する理解が得られない環境にいると、育児と仕事の両立が難しいと感じてしまい、退職したいと思ってしまいます。

出産後今の職場に復帰できるか不安

産休や育休が取得できても、仕事に無事復帰できるか不安を感じるケースもあります。出産によって給料が下がったり、昇進できなくなったりしてキャリアが止まるのではないかと心配を抱えてしまうためです。

なかには、職場の方が育児に対する理解がなく、産休や育休を取得したために否定的な意見を言われるケースもあります。妊娠による人間関係の悪化を懸念する方も少なくありません。次第に「以前のような環境で働けないのなら退職したい」という考えが生じます。

妊娠や出産を理由に仕事の復帰を断るのは各都道府県の労働局に禁止されているため、労働局への相談によって解決する事例もあるものの、居心地の悪さを感じてしまい退職を検討する方もいます。

妊娠しても仕事が辞めにくい理由

妊娠が発覚したあと、つわりやストレスを感じて退職したくても、なかなか辞めると決断できない方もいます。ここでは、妊娠しても仕事を辞めにくいと感じる理由について解説します。

出産や子育てにお金がかかる

出産や子育てにはお金がかかるため、仕事を辞めにくいと考える方は多いでしょう。基本的に妊娠や出産にかかる費用は健康保険の適用外です。公的支援制度も用意されているものの、少なからず自己負担額が発生します。

出産費用の平均値は40〜50万円です。出産までに発生する妊婦健診の費用は、合計5〜10万円程度となります。自治体による負担軽減をおこなっている場合もありますが、多額の費用が生じます。

さらに、出産後に子どもにかかるお金は0歳から3歳までは毎年50万円前後、生まれてから小学校に上がるまでは約440万円前後かかるといわれています。

出産や育児に少しでも備えようと考えた結果、仕事を辞めたいけれど辞められないと考える女性は少なくありません。

出産後ちゃんと社会復帰できるか不安

出産後に社会復帰できるか不安を感じて、仕事を辞めにくいと感じる方も多くいるでしょう。子どもがいる状態の再就職に不安が生じるためです。

調査機関「しゅふJOB総研」が「結婚・出産と就活」をテーマに主婦層を中心とする就労志向の女性にアンケート調査をおこなったところ、結婚や出産後の就職活動は難しいと感じる女性は92.6%、求人に応募しても選考に通りにくいと感じる女性は51.4%でした。

参考:結婚・出産後の就職活動について、女性はどう感じているのか?「難しい」 92.6%|就活が難しい理由「両立できる仕事少ない」78.1%

出産を控えている女性の多くは、出産後に採用されなかったり、正社員として雇用されなかったりする可能性を考え、退職を躊躇う傾向にあるようです。出産後の再就職のハードルの高さは、妊娠中に仕事を辞めたくても辞められない原因になります。

円満退職できるか不安

勤めている会社を円満に退職できるか不安を感じて、仕事を辞めにくいと感じる方もいます。人手が足りていない状況や、常に忙しい会社であると、退職を責められるのではないかと考えてしまうものです。

妊娠報告から退職までの間、居心地の悪さを感じてしまうことを想像すると、仕事を辞めたいと伝えにくくなります。退職を言い出せず時間が経ち、先送りしてしまうケースも多くあります。

妊娠して仕事を辞めるメリットやデメリット

退職する前に、メリットやデメリットを把握したうえで、今後の生活をシミュレーションしましょう。こちらでは、妊娠して仕事を辞めるメリットとデメリットを解説します。

妊娠して仕事を辞めるメリット

妊娠して仕事を辞めるメリットについて、それぞれ詳しく解説します。

出産までの時間ができて心に余裕がうまれる

妊娠して仕事を辞めるメリットは、出産までの時間を確保できる点です。出産準備に時間をかけられるため、精神的な余裕ができます。

赤ちゃんの衣服や家具を揃えたり、出産や育児に関する調べ物をしたりと、今まで仕事をしてきた時間を出産準備に充てられるため、十分に備えられます。

家でゆっくり体を休められるため、つわりが少し楽になったという声もありました。自宅にいれば、体調が悪くなったらすぐに休めるため、精神的負担も軽減できます。

仕事のストレスがなくなる

仕事のストレスがなくなる点も、仕事を辞めるメリットです。妊娠中は、体調の変化によって今までとまったく同じ業務をこなせなくなり、周囲に罪悪感を抱いてしまいストレスに繋がるケースもあります。

しかし、退職すると周囲への罪悪感から解放されてストレスを軽減でき、心身ともに安定して穏やかに過ごせます。仕事や職場の人間関係がストレス源である場合は、退職を検討してみるとよいでしょう。

妊娠して仕事を辞めるデメリット

妊娠して仕事を辞めるデメリットについても、それぞれ詳しく解説します。

収入がなくなる

妊娠して仕事を辞めると、金銭面の不安が生じやすくなります。退職して自身の収入がなくなってしまうと、収入源が夫の給料のみになるため、今後の生活に不安を感じる方も少なくありません。

出産後に仕事をはじめるにしても、正社員としての再就職が困難であったり、今の職場よりも収入が下がったりする場合があります。生活費に加えて子どもの養育費もかかるのに、収入が減るのは大きな痛手です。

外部とのつながりが少なくなる

妊娠して仕事を辞めると、外部とのつながりが少なくなるデメリットも生じます。自身と赤ちゃんの安静を考慮して、外出する頻度が減ってしまうためです。

仕事をしている間は、上司や同僚と会話や情報交換をする機会が毎日あったものの、退職すると話す機会は少なくなります。外部との関わりが減るために、閉鎖的で退屈な環境にいると感じてしまい、反対にストレスを抱える方も少なくありません。

妊娠して仕事を辞めるかどうかを判断するポイント

妊娠して仕事を辞めたいと思っていても「本当に辞めてよいのか」「退職して後悔しないか」と悩んでしまい、踏み出せない方も多いでしょう。ここからは、仕事を辞める判断基準について解説します。

職場の理解はあるか

仕事を辞めるかどうかを判断するポイントのひとつは、職場の方たちに出産や育児に対する理解があるかです。妊娠すると、産休や育休を取得してから職場復帰する方が大半を占めています。出産後に職場復帰したとしても、子どもの体調不良によって休まなければならないケースも増えると予想されます。

仕事を円滑に進めるためには、休みを取る際に職場の方に協力してもらう必要があります。育児に理解を得られず、休むたびに雰囲気が悪くなってしまうような職場の場合は、育児との両立が難しくなる可能性があります。

お金の心配はないか

金銭面の不安を解消できるのかという点も、仕事を辞めるかどうかを判断するポイントです。退職して自身の収入がなくなると、当然ですが家計の負担は増えます。

妊娠中は病院代やマタニティグッズ、出産後はベビーグッズや健診など、妊娠や出産、育児は出費が多くなりがちです。夫の収入のみで今後の生活を維持できるのか、家計を見直してみましょう。

出産後に再就職できるスキルはあるか

仕事を辞めるかどうかを判断する際に、再就職できるスキルが自身にあるのかを考慮しましょう。一定年齢層以上の中途採用では、専門性の高いスキルや経験を要求される場合があります。出産と育児で離職歴が長いと、なかなか採用されないケースも少なくありません。

妊娠や出産によって一時は退職するものの、再就職をしようと考えている方は、自身が持つ仕事のスキルを再確認してみましょう。

赤ちゃんとお母さんにストレスはないか

自身と赤ちゃんにとってストレスがないか、という点は仕事を辞めるかどうかを判断するうえで最も重視したいポイントです。ストレスは、母子ともに悪影響を及ぼします。心身にかかる負担が大きいと感じるなら、退職する方向で考えましょう。

もっとも大切にするべきは、赤ちゃんとお母さんの体です。通勤や業務内容、人間関係などすべて含めてストレスがない環境であるか、我慢せずに考えてみてください。

妊娠したらやるべきこと

妊娠をして仕事を辞めるにしても続けるにしても、準備が必要になります。ここでは、妊娠したらやるべきことについてまとめました。

上司や同僚に妊娠報告

妊娠した事実は、直属の上司や同僚になるべく早い段階で報告しましょう。余裕を持って報告しておくと、仕事の引き継ぎ計画や急に休んだときのフォローをしやすくなり、周囲の方の負担も軽減できます。

安定期に入るまで妊娠の事実は伏せておきたいと考える方もいますが、つわりの症状は妊娠初期から現れる場合が大半です。体調不良時に周囲からのサポートを受けやすくなるため、早めに相談しておくと安心できます。

妊娠や出産で支給されるお金や制度の確認

妊娠や出産によって支給されるお金や、活用できる制度も確認しましょう。妊娠や出産、育児はお金がかかるため、国や自治体から支援を受けられます。

代表的な経済支援に「育児休業給付金」「出産育児一時金」などがありますが、もらえる条件やタイミングはそれぞれ異なります。あらかじめ確認しておき、もらい忘れを防ぎましょう。

出産後のキャリアや人生設計について考える

出産後はどのような働き方をするのか、もしくは家事や育児に専念するのかと今後のプランも検討しましょう。出産後は子どもを養育していくため、以前とまったく同じ生活とはなりません。出産前後で環境は大きく変化するため、早めに計画を立てた方がよいでしょう。

出産後に職場復帰するか、一度退職して子どもが進学するタイミングで再就職するかなど、なるべく具体的に考えられるとベストです。現在の仕事にやりがいを感じていたり、人間関係が良好だったりするなら、会社を辞めても後悔しないかを考えてみてください。

収入や生活に関わる問題のため、自身の考えも大切にしつつ、パートナーとよく話し合って決めましょう。

妊娠や出産で支給されるお金や制度

妊娠によって退職したり休職したりすると、収入が減るのに出費は今まで以上に発生するため、金銭面で不安を感じる方も少なくありません。出産によって国や自治体、保健協会から支給されるお金や利用できる制度があるので、活用しましょう。

ただし、すべての制度を無条件で利用できるわけではありません。妊娠や出産時の給付金や制度をリスト化し、受け取れる状況を簡単にまとめたので、ぜひ参考にしてみてください。

<妊娠や出産時の給付金や制度一覧>

  退職しても受け取れるお金 仕事の継続で受け取れるお金
出産育児一時金
出産手当金 条件による
育児休業給付金 ×
失業給付金(失業手当) 条件による ×
傷病手当金 ×
高額療養費制度

出産育児一時金

出産にかかる経済的負担を軽減するため支給されるお金で、赤ちゃん一人につき42万円が支給されます。双子なら84万円と、多胎児を出産したときは赤ちゃんの人数分支給額が増える点が特徴です。

受給対象者は健康保険や国民健康保険などの被保険者または被扶養者のため、ほぼ全員が受け取れます。

夫の扶養に入っている場合は夫の勤務先の保健協会に、自身が在職中の場合は勤務先の保健協会に申請しましょう。国民健康保険を適用している方は、住んでいる地域の役所に申請します。

出産育児一時金は、入院、分娩費用への充当を想定して補助されるお金です。ただし、出産して退院後に支払われるため、入院、分娩費用を一時的に立て替えなければなりません。支払いを回避したい場合は「出産育児一時金直接支払い制度」を利用しましょう。

「出産育児一時金直接支払い制度」は、病院や産院などの医療機関に出産育児一時金が直接支払われ、出産費用に充てられる制度です。出産時にかかった費用から、支給予定の42万円を引いた金額のみ産院に支払えばよいため、入院、分娩費用を立て替えずに済みます。

入院、分娩費用が42万円を下回った場合は、申請をすれば差額分の支給を受けられるため安心です。制度を利用できるかは、医療機関に確認しましょう。

出産手当金

出産手当金は、出産休暇中に給料の代わりに支払われるお金です。1日あたりの支給額は、過去12か月分の給料を基準とした日給の2/3となります。

受給対象期間は、出産予定日の42日前から出産翌日以降56日までの範囲内で、会社を休み給与の支払いがなかった日です。出産が予定日を過ぎても、超過した日数分支給されます。

受給対象者は、勤続期間が継続して1年以上あり、かつ勤務先の社会保険に加入している方です。退職後2年以内であれば受給可能のため、妊娠により仕事を辞めても受け取れます。

雇用形態に制限がないため、勤務先の社会保険に加入していればパートやアルバイトの方でも受け取れます。

受け取りには条件があり、妊娠4か月目以降の出産であり、出産のために休業する必要があります。

出産手当金は、会社が加入している健康保険組合または保健協会へ「出産手当金支給申請書」を提出して申請しましょう。一般的には、病院や産院でもらった証明とともに、会社に申請書を提出すれば、あとの手続きは会社がおこないます。

産休中に振り込みがあるわけではなく、産休が終わってからもらえるお金である点も把握しておきましょう。産休後すぐに手続きをすれば、出産日から3か月程度で支給されます。

ただし、国民健康保険の加入者や、会社を退職したあとに健康保険のみ継続できる任意継続被保険者、夫の扶養に入っている方は、出産手当金の受給資格はありません。

育児休業給付金

育児休業給付金は、育休中の給料の代わりに支払われるお金です。1か月あたりの支給額は、育休開始から6か月間は前年月収の約67%、6か月以降は約50%となります。

受給対象者は、雇用保険に加入し1年以上働いた経験があり、産休後すぐに職場復帰をせずに育休を取得した方です。ただし、退職する予定で育休を取得すると支給対象にならないため注意しましょう。

出産した女性のみではなく、育休を取得した配偶者も受給対象になります。

受給期間は、出産手当金の支給が終わった翌日から子どもが1歳になるまでです。万が一、保育園に入れなかった場合は、最長2歳まで延長もできます。

育児休業給付金は会社に申請して受け取れるお金ですが、初回以降も2か月に一度手続きをおこなう必要があるため、忘れないようにしましょう。

失業給付金(失業手当)

退職済みの方のみ受け取れて、再就職活動の生活をサポートするために支給されるお金です。1日あたりの支給額は、過去6か月分の給料を基準とした日給の50〜80%となります。

受給対象者は、退職前1年間に雇用保険に6か月以上加入しており、現在求職中で仕事につける状況である方です。求職活動ができない妊娠期間中や出産直後は、もらえる可能性が低いと考えられます。

ただし妊娠を理由に退職した場合は、失業保険の受け取りを最大3年間延長も可能です。たとえば妊娠して退職し、出産や育児を経て2年後に就職活動を再開すると、所定給付日数分の失業給付金を受け取れます。

受給期間の延長は、退職した日から1年間のうち、出産や育児により就業できない期間が30日間以上続くことが条件です。

受給期間は、雇用保険の加入期間や退職の理由を加味して、90〜360日の間でそれぞれ決められます。

失業給付金の申請は、ハローワークにて手続きしましょう。

傷病手当金

切迫流産や切迫早産、つわりがひどい場合など、やむを得ず仕事を休まなければならなくなった場合に受け取れるお金です。支給額は、給料の約2/3となります。

受給対象者は、勤務先の健康保険に加入している方です。無給で連続3日休業したあと、4日目以降も休むと支給されます。なお、医師が労務不能と判断した診断書が必要になります。

産休中に受給できる出産手当金とは重複できないため注意しましょう。

高額療養費制度

医療費の自己負担額が高額になった場合に、一定の金額が払い戻される制度です。払い戻しの金額は次の表のとおりです。

<自己負担限度額(70歳未満の方)>

所得区分 自己負担限度額(上限額) 多数該当の自己負担限度額(※)
83万円以上 252,600円 + (総医療費 - 842,000円) × 1% 140,100円
53〜79万円 167,400円 + (総医療費 - 558,000円) × 1% 93,000円
28〜50万円 80,100円 + (総医療費 - 267,000円) × 1% 44,400円
26万円以下 57,600円 44,400円
低所得者(住民税非課税者等) 35,400円 24,600円

※高額療養費として払い戻しを受けた回数が、1年間で3か月以上あった場合は多数該当にあたります。4回目から自己負担限度額がさらに引き下げられます。

自然分娩は対象外ですが、帝王切開や吸引分娩、鉗子分娩、骨盤位分娩などの異常分娩に分類される出産となったときに適用される制度です。

ほかの病院でかかった費用や、家族の医療費も合算できます。

妊娠で仕事を辞める際に必要な手続き

ここからは、妊娠で仕事を辞めると決めた場合に必要な手続きについて解説します。

夫の扶養に入る手続き

退職すると、会社で加入していた健康保険や厚生年金保険は脱退となります。脱退後は夫の扶養に入ることで、金銭負担なく社会保険を適用可能です。所得税や住民税の一部が免除される利点も得られます。

扶養に入る手続きは、夫の会社でおこないます。夫に申請してもらい手続きしましょう。

年金の手続き

退職すると、厚生年金から国民年金への加入手続きが必要です。仕事を辞めたあと、出産や育児にしばらく専念するなら第3号被保険者となります。手続きは夫の会社でおこないましょう。

退職後に自営業をはじめた場合は、国民年金第1号被保険者になります。第1号被保険者になると、出産予定日の前月から4か月間は国民年金保険料が免除されます。

健康保険の継続も可能

「任意継続健康保険」を利用すると、退職後も加入していた健康保険を継続できます。退職日から20日以内に保健組合に申請書を提出すると、健康保険を2年間適用可能です。

ただし、在職中は会社が半額負担していた保険料が、全額負担となります。国民健康保険への加入や、夫の扶養に入る方がよいケースが多いため、保険料を比較して決めるとよいでしょう。

まとめ

妊娠した際に仕事を辞めたいと感じる理由や、辞めるタイミングについて解説しました。妊娠中は、つわりでつらい思いをする以外にも、職場の方に迷惑をかけていると感じてしまい、心苦しい思いをすることもあります。

しかし、何より大切なのは産まれてくる赤ちゃんとお母さんの健康です。仕事の継続が難しいのであれば、退職も視野に入れましょう。

金銭面での心配もつきものですが、出産時の支援や、再就職でもらえるお金もあります。制度を活用しながら、出産、育児の準備を進めていきましょう。

※本記事の情報は2023年2月時点のものです。
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